脆弱性とは、コンピューターソフトウェア、ハードウェア、またはサービスに存在するセキュリティ上の弱点や欠陥を指します。これによって、外部の攻撃者により不正なアクセスや情報の漏洩が可能となることがあります。
攻撃手法も日々進化しており、新しい脆弱性が次々と発見されています。
このような背景から、脆弱性診断は非常に重要となってきます。ITシステムにおける脆弱性は、企業や組織の信用や業績に大きな影響を与える可能性があるため、定期的な診断と適切な対策が求められています。しかしながら脆弱性とはそもそも何か?どのような対応をすればよいか?など疑問点の多い方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、脆弱性の基礎知識や危険性から、企業が取るべき基本的な対策などを解説します。
脆弱性診断ツールオススメ4選!
脆弱性診断は、WebアプリケーションやITシステムのセキュリティ上の弱点を発見し、これらのリスクを低減するための重要な手段となっています。診断を行うためには、様々なツールが利用されます。今回はその中でも代表的な脆弱性診断ツール4選をご紹介します。
OWASP ZAP
OWASP ZAP (Zed Attack Proxy) は、Webアプリケーションのセキュリティ脆弱性を発見するための無料のオープンソースツールです。
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特徴 GUIベースで使いやすく、アクティブ・パッシブスキャン機能を持つ。また、プラグインを追加することで機能を拡張できます。
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使い方 WebアプリケーションのURLを指定し、スキャンを開始することで脆弱性の検出が行えます。詳しいレポートや対策方法も提供されます。
Burp Suite
Burp Suiteは、Webアプリケーションのセキュリティテスティングに特化したツールです。
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特徴 インターセプトプロキシを搭載しており、リアルタイムでの通信内容の確認や改ざんが可能。また、自動スキャンやリピータ機能も搭載している。
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使い方 通信をインターセプトし、リクエストやレスポンスを分析・編集できます。また、自動的に脆弱性を検出するスキャン機能も利用可能です。
Nessus
Nessusは、広範囲のターゲットに対する脆弱性スキャンを行うことができるツールです。
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特徴 多数のプラグインが提供されており、これにより多様な診断が行える。また、定期的な脆弱性データベースの更新が行われている。
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使い方 ターゲットとなるホストやネットワークを指定し、スキャンを実行。結果は詳細なレポートとして出力されます。
OpenVAS
OpenVASは、オープンソースの脆弱性診断ツールとして幅広く利用されています。
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特徴 定期的なアップデートにより新しい脆弱性にも対応。また、多数のプラグインや拡張機能が提供されている。
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使い方 Webベースのインターフェースを通じてターゲットを指定し、スキャンを実行。結果はグラフィカルに表示され、詳細な情報も確認できます。
脆弱性診断には「手動診断」と「自動診断」があります。今ご紹介したツールは「自動診断」に当てはまりますが、それぞれのメリット、デメリットもご紹介します。
ツール診断と手動診断の違い
ツール診断
自動的に脆弱性を検出するツールを利用して診断を行う方法。
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メリット: 大規模なサイトやアプリケーションでも短時間でスキャンが可能。
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デメリット: 一部の脆弱性を見逃すことがある。
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オススメのシチュエーション: 定期的な脆弱性チェックや大規模なシステムの初期診断に適しています。
手動診断
専門家が手動で診断を行う方法。
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メリット: 高い精度で脆弱性を発見できる。
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デメリット: コストや時間がかかることが多い。
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オススメのシチュエーション: 重要なシステムや新しいアプリケーションのリリース前に、詳細な脆弱性診断を行いたい場合に適しています。
ツールを使った脆弱性診断だけでは不安!だけどコストや時間を抑えたいという方にオススメなのが「ペネトレーションテスト」です。
ペネトレーションテストの詳細についてはこちらをご覧ください。
脆弱性診断の実施方法
私たちが日常的に利用する数多くのシステムやアプリケーションは、残念ながらセキュリティ上の弱点を持っている場合があります。これらの弱点を見つけ出し、安全なIT環境を構築するために、脆弱性診断が不可欠となります。脆弱性診断を効果的に行うための具体的な手順や方法を以下にご紹介します。
診断の流れと手順
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事前準備 診断の範囲や目的を明確にし、必要な情報やツールを整える。 目的の明確化:診断の目的や範囲をはっきりさせる。例えば、特定のアプリケーションのみを対象とするか、全体を対象とするかを決定。 ツールの選定:使用する診断ツールや技術を選択。手動診断を行う場合や特定のツールを使用する場合には、その準備も行う。 関係者との連絡:診断の実施を関係者やステークホルダーに通知。診断中のサービス停止や遅延が予想される場合は、事前に告知。
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情報収集 対象となるシステムやアプリケーションの情報を収集する。ドキュメントの確認やネットワークのスキャンが行われることが多い。 ドキュメント確認:対象となるシステムやアプリケーションの設計書、仕様書を確認し、システムの概要を理解。 ネットワークスキャン:対象のネットワークをスキャンし、アクティブなホストやサービスを特定。 技術的情報の収集:システムのOS、使用しているソフトウェアのバージョン、開放されているポートなどの情報を収集。
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脆弱性の検出 収集した情報を基に、脆弱性を検出する。これはツールや手動の方法で実施されます。 自動スキャン:脆弱性診断ツールを使用して、自動的に脆弱性を検出。 手動診断:専門家が手動で詳細な診断を行い、ツールでは検出しきれない脆弱性を特定。 確認作業:検出された脆弱性が実際に問題となるかを確認。
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結果の分析 検出された脆弱性のリスクを評価し、報告書を作成する。 リスク評価:検出された脆弱性の重要度やリスクを評価。 報告書の作成:脆弱性の詳細やリスク、対策方法をまとめた報告書を作成。
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対策の提案 脆弱性に対する具体的な対策を提案し、それに基づいて修正作業を進める。 修正提案:脆弱性に対する修正や改善の提案を行う。 実際の修正:提案された対策を元に、システムやアプリケーションの修正作業を実施。 再診断:必要に応じて、修正後のシステムやアプリケーションに再度脆弱性診断を行い、問題が解消されているか確認。
ペネトレーションテストとの関連性
ペネトレーションテストは、実際の攻撃手法を模倣してシステムのセキュリティをテストする方法です。脆弱性診断は、弱点を発見することを主目的としていますが、ペネトレーションテストは、発見された弱点を実際に攻撃してみることで、その影響を確認します。両者は密接に関連しており、効果的なセキュリティ対策を行うためには、両方の方法を組み合わせることが推奨されます。
脆弱性診断の種類
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アプリケーション診断:Webアプリケーションやモバイルアプリケーションのセキュリティを対象とする診断。
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ネットワーク診断:ネットワーク機器やサーバのセキュリティを対象とする診断。
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インフラ診断:物理的なインフラやデータセンターのセキュリティを対象とする診断。
脆弱性診断の費用相場
脆弱性診断の費用は、診断の範囲、対象となるシステムやアプリケーションの規模、使用するツールやサービス、診断を行う専門家の経験やスキルによって大きく変動します。以下に、一般的な費用相場の参考情報を示します。
診断ツールのライセンス費用
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無料のツール:OWASP ZAPやOpenVASなど、無料で使用できるオープンソースのツールもあります。
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有料のツール:Burp Suite ProやNessusなどの商用ツールは、年間ライセンスや一度の購入での価格が設定されています。価格は数万円から数十万円の範囲が一般的です。
診断サービスの費用
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手動診断: 専門家が手動で診断を行う場合、1日あたりの費用が設定されることが多い。一般的には、10万円から30万円/日 程度が相場となります。
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ツール診断:自動的に診断を行うサービスは、診断対象のページ数や機能に応じて価格が変動。数万円から数十万円の範囲での診断が可能です。
その他の費用
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初期コンサルティング:診断の範囲や目的を明確にするための初期コンサルティングの費用。無料の場合もあれば、数万円が必要な場合も。
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再診断:脆弱性の修正後に再診断を行う場合、追加の費用が発生することがあります。
まとめ
今日の時代、テクノロジーは私たちの生活のあらゆる面で欠かせない存在となっています。しかし、それと同時にセキュリティ上のリスクも増しています。脆弱性は、日々の業務やプライベートで使用する多くのシステムやアプリケーションに潜むリスクの一つです。
この記事を通じて、脆弱性とは何か、どのようにしてそれを検出し対策するのか、そしてその際の費用相場など、基本的な情報をお伝えしました。診断ツールの選択や診断方法の適用は、状況やニーズに応じて適切に行う必要があります。
また、セキュリティは一度きりの取り組みではありません。日々進化する攻撃手法や新たに発見される脆弱性に対抗するために、定期的な監視と更新が必要です。
皆さんも、この記事をきっかけに、自らの環境のセキュリティについて再考し、適切な対策を講じていただければ幸いです。